Oは、おふくろからすれば甥、吾輩から見ると従兄に当たるわけだが、隣家と言ってもここ何十年も付き合いがないし、これまでのいきさつからしても到底線香を手向けることなどできない相談である。
一応親族であることに違いないが、70年近くに亘ってほとんど交流がない腐れ縁の状態が続いている上に、10年前にやっと大幅な譲歩をすることで決着した境界紛争の調停で受けた誹りを考えれば、すでに親戚関係は断絶されたと言っても過言ではないのだ。
調停半ばで病魔に倒れたおふくろの成年後見人として、境界紛争の調停に臨んだ吾輩だが、「親も親だったが、よくもまぁこんなによくたかり(強欲)な奴に育ったなぁ」と、次から次へと押し付ける無理難題に閉口した事が何回あったか・・・・。Oもその弟のAも、少しでも土地を削りたくないらしく、調停で決めた境界杭を何本か抜いてしまうような輩だったからなぁ・・・・。
Oの親(おふくろの異母兄弟)が死んだ時も兄弟たちがほとんど全員弔問に行かなかったため、Oの嫁が泣きながらおふくろに「焼香に来てください」と懇願に来たほどなのだ。おふくろが兄弟や関係者を説得してやっとみんなで線香を上げに出向いたのだが、それほど長男でもあるOの親は嫌われ者だったのである。
代変わりすれば関係改善すると期待していたにも拘わらず、結局親と同じ愚行を繰り返したO。おふくろと叔母以外に生存者がいなくなった今、関係者を含めだれも焼香に行かないのは当然の報いなのだ。
ただ、反面これで一つの区切りがついたとも言える。娘から「Oが死んだ事だし、これからOの息子と仲良くしたら・・・・」と言う意見もある。しかし、そう簡単に関係修復なんて出来っこないのだ。来る者拒まずとしてもこちらから諂うことは絶対にしないし、それより調停で決めたOが境界際に植えたケヤキを早く切る事に期待したいよ。
隣近所もみんな代がわりして昔からのいきさつを知る人たちが少なくなった今、こうした関係を怪訝の目で見られるのは致し方ないと思っているが、いつかそのうちわかってもらえる時が来ると信じている。絶対に・・・・。